Friday, August 1, 2008

浪人激励会 メッセジ 

次の文は去る7月18日南山男子部で行われた「浪人激励会」のメッセージです。
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浪人諸君
                                                 松岡 博

 今日は暑い中をご苦労さん。久しぶりに日ごろ会ってない同窓生に会って話もはずんでいることでしょう。残念ながら、諸君の激励会には参加できません。昨日17日から8日間の予定で、女房とニューカレドニア、いわゆる「天国に一番近い島」に行っていますので。諸君にじかに親しく顔を会わせて激励できなくても、私の激励の気持ちは、ここに参加されている旧高3の先生方と同じです。

 私が現役の英語の教員をしている頃、先輩の英語の先生に、森という英語の先生がいました。私より15歳年上の先生でした。私が、たぶん40歳ぐらいのとき、森先生と話をしていて話題が退職のことになりました。わたしは森先生に「退職したら、英語を勉強しないかもしれない」と言ったら、森先生がカンカンに怒って「それじゃ、今までやってきた英語は一体何だったのか。そんな英語教師なんか辞めてしまえ」と言われました。森先生は英語に対する情熱が強く、特に英文法は相当の学識がありました。私の英語に対する中途半端な態度を叱られたのだと思います。

 それから25年が経ち退職した今、私は英語を書いたり、聞いたり、読んだり、朝から晩まで英語ばかりやっています。英語馬鹿というやつです。森先生は他界されましたが、今の私の姿を見られたら、目を細めて喜ばれるでしょう。

 実は私は退職したあと一ヶ月ぐらい体調を崩してしまいましたが、体調が回復したのはおそらく英語のおかげだったかと思います。わたしは今年65歳で、視力も弱ってきて、難儀しています。あとどれぐらい英語に親しむことができるかわかりませんが、視力と聴力がこれ以上衰えないように願うばかりです。

 さて、諸君は大学合格を目指して、日夜まい進していると思いますが、人生、大学合格が目標ではありません。大学合格は単なる通過点に過ぎません。合格したあとのことを考えてください。大学で勉強し、卒業し、社会に出て働き、退職し、老後を過ごすという長い道のりがあるのです。今勉強していることが、諸君の人生に結びついていくのです。今勉強していることが、諸君の人生に指針を与えるのです。今一生懸命頑張っていることが30年後、40年後、いや50年後以降の生き方に結局のところ結びついていくのです。

 幸い私は英語によって今の定年後の生活が救われています。好きな英語を教え、退職後も英語を続けて勉強できるというのは幸せなことです。私の生き方は諸君の参考にならないかもしれませんが、大学合格だけを目標にしないで下さい。目先のことのみにとらわれないで下さい。今諸君が進もうとしている分野、大学で勉強しようとしている専門分野を極めることを目標にしてください。その目標に近づけば近づくほど、その専門分野の学識は諸君の人生を豊かにし、人生を支える力となります。一生の支え、一生の力を養うために日夜勉強しているのだと考えてください。そうすれば、運悪く来春失敗しても立ち直りが早いです。受験のための勉強と思うから焦るのです。長い一生を付き合ってくれるもの、一生の同伴者を探していると思えばいいのです。それには中途半端はいけません。一生の伴侶は真剣に探すものです。その意味で今一生懸命勉強してください。そういう視点で受験生活を見てください。

 昨日地下鉄に乗ったら、隣に座っている人が30歳ぐらいの東南アジア系の外人で、身長190センチ、体重120キロぐらいで、頭が丸坊主の、ひげ面の大巨漢でした。彼は左手に「クレヨンしんちゃん」の漫画を持ち、右手に電子辞書を持って、前かがみに座り、一生懸命漫画を読んでいました。新瑞橋で彼も降りましたが、彼はエスカレーターに乗っている間も「クレヨンしんちゃん」を辞書を頼りに読んでいました。諸君もこの巨漢に負けないように、長い目で受験生活をとらえて、頑張ってください。

 健闘を祈ります。 Good Luck!

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