Friday, March 14, 2008

チャンスはピンチだ




ハンカチの木  第8号
        南山高等学校(男子部)3年生 学年通信  2007年12月17日

チャンスはピンチだ

 諸君は兎と亀の競争の話を知っていますね。兎は油断して一休みしているうちに亀に追い越されてしまう話です。

 この「油断」という言葉の由来は何でしょうか。一説には『涅槃経(ねはんぎょう)』という釈迦入滅の意義を著した経本に「王が臣下に油を持たせて、一滴でもこぼしたら命を絶つと命じ、抜刀した者が臣下のすぐ後で見張っていた」とあるそうです。もうこれで安心だという気の緩みから、思わぬ、それこそ命を絶つような、失策をしてしまうことを戒めた話です。

 『徒然草』にも同じような逸話があります。次の文です。
高名の木登りといひし男、人を掟てて高き木に登せて、梢を切らせしに、いと危く見えしほどは言ふ事もなくて、おるゝ時に、軒たけばかりになりて、「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何にかく言ふぞ」と申し侍りしかば、「その事に候ふ。目くるめき枝危きほどは、己れが恐れ侍れば申さず。あやまちは安き所になりて、必ず仕る事に候ふ」と言ふ。

 つまり、木登りの名人が、弟子を木に登らせて梢を切らせているときに、弟子が目が回るような梢の高いところにいるときは、名人は黙っていたのに、弟子が飛び降りられるぐらいの軒ぐらいの高さまで降りてきたときに「油断するな」と言った理由を聞かれて、名人は「過ちはもう安心だと思うときに生じるからだ」と言ったというのです。

 ここまで読んで賢明な諸君は私が何を言わんとしているかお分かりでしょう。
 先週から「決定組」のクラスができました。受験組の諸君はこれから厳しい受験に突入していくのですが、決定組の諸君は受験勉強をしなくて済むわけです。決定組の諸君にとっては、今、自分の選んだ道をどう進むかをじっくり考え、それを実行に移す好機が到来したのです。このチャンスをどう生かすかは君の心がけ次第です。

 しかし、正直言って、受験勉強から開放された今、決定組の諸君は一息つくのはいいでしょうが、安心しきってしまっては『徒然草』ではないですが、思わぬ失策をしでかすのです。チャンスの中に思わぬピンチが潜んでいるのです。油断大敵です。受験勉強で全身全霊をつぎ込み、夜も緊張でよく眠られないぐらい神経をすり減らしている受験組の生徒諸君に比べたら、決定組の諸君は気を抜きがちです。今の状態は、後から来た亀に追い抜かれ、抜刀した者に首をはねられ、着地失敗で足を折るというピンチの状態にあるといっても過言ではありません。

The race is not over.(競走はまだ終わっていない)です。人生一息つくのはいいでしょうが、気が緩みっぱなしではいけません。勝って兜の緒を締めて下さい。

Thursday, March 13, 2008

ピンチはチャンスだ

ハンカチの木  第7号
        南山高等学校(男子部)3年生 学年通信  2007年10月29日

                      ピンチはチャンスだ

 諸君は、日光の「眠り猫」で有名な左甚五郎という名大工を知っていると思いますが、甚五郎はどのように仕事をしたかと言いますと、仕事の注文が来てもすぐにはしないで、ほったらかしにして、飲んだり遊んだりして、いざ期限がいよいよ近づいてきたというときになって始めて腰を上げ、仕事に取り掛かり、仕事の鬼になり、徹夜もいとわず、ぶっ続けに仕事をして、見事な大工仕事をしたといいます。「なぜ締め切りギリギリまで仕事を放りっぱなしにしておくのか」と聞かれて、甚五郎は「切羽詰ったほうが、いい仕事ができる」と言ったそうです。

 似たような話に、中国の秦の時代の末期に、漢の高祖となった劉邦の家来に韓信という名参謀がいて、敵の項羽と戦った際に「背水の陣」を取りました。諸君も知ってのとおり、川を背にして敵陣に対峙するのは当時の戦略では非常識でしたが、韓信は部下をうしろに一歩も引けないという生死を賭けたギリギリの状態に追い込み、そこから兵士一人ひとりの必死の力を引き出し、戦いに勝ったのです。

 「火事場の馬鹿力」もそうです。私の小学校の担任の先生の話ですが、前任校で、小火(ぼや)があり、音楽教室に火が燃え広がっていき、あわやピアノに燃え移るというギリギリの瞬間、その先生ともう一人の先生の二人だけでグランドピアノを持ち上げ、校舎から外に運び出したそうです。火事がおさまって、ピアノを中に運ぼうとしても、とても二人だけでは運べなく、4,5人で運び入れたそうです。後から考えても、どうして運び出すことができたか、どこからあんな底力が出たのか分からなかったそうです。

 ここまで読んで、賢明な諸君は私が何を言わんとしているか、もうお分かりでしょう。大学入試が近づく中、諸君一人ひとりが必死の思いで、受験勉強に取り組んでいる様子が手に取るようによく分かります。本当に諸君は今一生懸命勉強しています。頑張っています。中学時代に、いや、高2時代まで、全くといっていいほど何も勉強していなかった人も、今猛烈に勉強しています。精神的にも肉体的にもこの受験勉強はきついものです。高校入試を経験していない諸君にとっては、今までは順調な南山生活でしたが、今は逆境のピンチといってもいいでしょう。

 しかし、このギリギリのピンチは君が持っている全ての能力が発揮され、フル回転し、自分では思いもよらなかった力が湧き出る時期でもあるのです。人生、今のように切羽詰ることはそう度々はありません。このピンチは君の全能力を発揮する最高のチャンスなのです。自分の隠れた才能を最大限に引き出す最高のチャンスなのです。第3者の立場に立つことは難しいでしょうが、できれば自分を第3者から眺め、自分は今、人生最高のチャンスに恵まれているのだ。このチャンスを最大限に生かし、自分がどれだけ力を持っているか発見してみよう、と考えるのが大切です。それにはギリギリの切羽詰った今を生かすことです。頑張って下さい。

Saturday, March 1, 2008

MATの目 NO. 21 ~ NO. 29

MAT'S EYE ON THE WORLD
南山高等学校第60回卒業生 日英バイリンガル通信 No. 29  松 岡 博  
Congratulations

  Congratulations on your graduation from Nanzan Boys’ High School. I am proud of you all for making the graduation ceremony such a dignified one.
  From the beginning to the end of the ceremony, you were all “young gentlemen,” and behaved yourselves as such. During the roll call, every one of you responded, “Yes” sincerely. Mr. Tamada, Mr. Fuma, Mr. Nakano, Mr. Tomida, and Mr. Tomita did a very good job.
  The final event of singing the Nanzan School Song was surprisingly impressive. You sang it very well from the top of your voice. The semi-professional conductor, Mr. Ogawa encouraged all the students including the eleventh and tenth graders to sing the song in harmony and with strength. The song resonated loudly in every hole and corner of the auditorium. That was the loudest and strongest song I have ever heard in the auditorium.
  To tell you the truth, during the graduation ceremony last year, believe it or not, tears rolled down my cheeks. I couldn’t stop them. I thought at that time, “I have only one year before they graduate. In only one year, I must say good-bye to them.” I felt sad and lonely. Today, I tried not to cry, though I felt the same feeling.
  The proverb says, “Meeting is the beginning of parting.” I met you six years ago and “parted” today, but I know we can meet with each other some day soon. So, good luck and see you again.
                           卒業おめでとう

諸君、卒業おめでとう。厳粛な卒業式ができ立派でした。式の最初から最後まで全員が「若い紳士」そのものでした。名前を呼ばれたとき、諸君一人ひとりが心をこめて「はい」と返事をしました。玉田君、夫馬君、中野君、冨田君、各自見事に役割を果たしました。
 最後の校歌斉唱も、みんな声高らかに歌い、心を打ちました。プロ級の指揮者、小川君も高1、2生を巻き込み、全生徒から力強くハーモニーのある声を引き出しました。校歌は講堂の隅々まで響き渡りました。私が南山に来て以来、あのような大きな力強い校歌は聞いたことがありません。
 実は、昨年の卒業式で、信じないかもしれませんが、涙が頬をつたわりました。そのとき「あと一年で彼等は卒業だ。たった一年でお別れだ」と思うと、悲しく寂しくなったのです。今日も同じ気持ちでしたが、泣かないように頑張りました。 
 諺で「会うは別れの始め」と言います。諸君に6年前に会い、今日が「別れ」でした。が、また近いうちに会うでしょう。Good Luck! また会いましょう。
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校3年 日英バイリンガル通信 No. 28 January 16, 2008 松 岡 博

THREE DEMERITS
  Everyone has some kind of inferiority complex. Some regret that they are not good at memorizing, others feel bad that they are not talented in writing, and still others are depressed that they are slow in understanding. How, then, can you break free from such spells? Here is one answer.
  There lived in Korea a Confucian scholar called Dasan in the 18th century. One of his students was a 15-year-old boy named Fansan. One day when Dasan recommended Fansan to read a certain book, Fansan said, “I can’t read it because I am a slow learner.” Dasan replied, “You can read it because you have none of the three demerits a scholar has. They are: first, good memory; second, talent for writing; and third, quick understanding. When one has good memory, he does not try to appreciate the meaning of what he has read. When one can write well, he tends to be unconsciously fascinated with his writing. When one understands things quickly, he fails to think thoroughly, resulting in lack of thoughtfulness. On the contrary, a slow learner will deepen his wisdom if he is absorbed in something wholeheartedly. He will make a continual advancement once he finds a breakthrough in the impasse. One who is making steady efforts to improve himself under adverse circumstances will shine brightly in the end.”
  The student Fansan later went on to become an outstanding author of Chinese poetry.
                       
三つの欠点

 誰にも何らかの劣等感があります。自分は記憶力が弱いとか、文才が無いとか、飲み込みが遅いとか言うような感情があるのです。では、そんな呪縛をどのようにして解いたらいいのでしょう。こんな解き方があります 。
 18世紀、朝鮮に茶山(ダサン)という儒学者がいました。その弟子に黄裳(ファンサン)という15歳の少年がいました。ある日、茶山は黄裳にある本を読むように勧めましたが、黄裳は自分は愚鈍だからそのような本は読めませんと言いました。茶山は答えました。「読めるとも、なぜならお前には学問を好む者が持つ三つの欠点が一つもないからだ。第一が記憶力が良いという欠点。一度で暗記できる者はその意味を吟味しようとしない。第二が文章力があるという欠点。すぐに文章が書ける者は無意識の内に自分で書いたものに酔ってしまう。第三が理解力に優れているという欠点。飲み込みが速い者は深く考えないので思慮が足りない。これに対して、愚鈍でも一生懸命のめりこむ者は見識が広がる。行き詰っても、いったん突破口を開ければ留まることを知らない。辛くても粘り強く自分を磨くものはやがてその光が輝くのだ」
 後に、黄裳は著名な漢詩の詩人になりました
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Dasan (茶山1762-1836) 朝鮮の儒学者  Fansan (黄裳1788-1863) 朝鮮の漢詩人
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校2年 日英バイリンガル通信 No. 27 March 13, 2007 松 岡 博
A SLICE OF BUTTERD BREAD OR A CAT

  Did you know M-kun brought his cat named Leo when he joined the Nanzan Study Tour to Italy last December? Why did he take a cat? Because he wanted to do an experiment on Murphy’s Law, which he studied about in my English lesson.
  As you know, according to the law, if anything can go wrong, it will go wrong. For example, when you are in a hurry, the bus always runs into a red light. Or when you have finished washing your car, it begins to rain. Or the bread always falls on its buttered side.
  When M-kun knew about the Law of the Buttered Bread, he wondered what would happen if he tied a slice of buttered bread on a cat’s back, buttered side up, and dropped it.
  After the trip he said to me: “When the bus reached the Leaning Tower of Pisa, I tied the buttered toast, which I had saved from the hotel breakfast table, to Leo’s back. I climbed to the second floor of the tower, and threw it in the air. First It fell, but suddenly stopped just above the ground, hovering. Leo then began to turn around. It rotated again and again as if forever. I was watching it impatiently for about 20 minutes, worrying about the appointed time for the bus, when it landed on its feet. What happened to the law? I picked Leo and understood it all. The butter, heated by the sun and the cat’s body temperature, melted and evaporated. Needless to say, I was late for the bus and scolded by Mr. Nakatani.”

                 バターつきパンか、それとも猫か

 諸君は、M君が去年12月の南山イタリア研修旅行に参加したときレオと言う猫を持っていったが、知ってたかな。なぜ猫なんか持っていったんだって? 私の英語の授業で習ったマーフィーの法則の実験をするためだよ。
 知っての通り、マーフィーの法則によれば、うまくいかなくなるものは何でもうまくいかなくなるんだ。例えば、急いでいるときに限ってバスは赤信号毎に止まるとか、車を洗車し終えると雨が降り出すとか、バターをぬったパンを落っことすと必ずバターの面が下になって落ちるんだ。
 M君は「バターつきパンの法則」を知って、「もしバターつきパンを、バターのぬってある面を上向きにして猫の背中にくっつけて、猫を放り投げるととどうなるか」と思ったのだよ。
 旅行後、M君は私に次のように話したね。「バスがピサの斜塔に着くと、僕はホテルの朝食に出たバターつきパンをレオの背中に結びつけ、塔の2階に登り、レオを放り投げたんです。最初は落下しましたが、急に地上すれすれのところで止まり、ふわりと浮かんだ状態になりました。それから回転しだし、永久かと思うぐらいぐるぐる回り続けました。バスの集合時間が気になったのですが、20分ぐらい辛抱して見ていると、猫は足から着地したのです。例の法則はというと、レオを拾い上げて納得しました。バターが太陽の熱とレオの体温に温められ、溶けて蒸発したのです。もちろん、僕はバスに遅れて中谷先生叱られました。」
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校2年 日英バイリンガル通信 No. 26 December 21, 2006 松 岡 博
A LETTER TO SAM

  You saw “Letters From Iwo Jima” on December 16. What was your impression? Did you find any moving scene? I was moved by the scene where Baron Nishi reads a letter which Sam, a dead American soldier had in his pocket.
  The letter was sent to Sam by his mother. It tells about his family matters including their mischievous dog that dug a hole beneath the fence. I do not remember the content of the letter exactly, but at the end of the letter, she says something like this: “Do what you think is right. That is justice. Please take care of yourself and return home.”
  As Baron Nishi reads the letter aloud to his group of exhausted soldiers who are lying, they begin to stand up one after another as if something had sparked in their brain. They even seem to be paying homage to Sam’s mother. Apparently, everyone was remembering his mother back in Japan. One of them says, “My mother wrote the same thing to me.”
  This is the moment when they realize that American soldiers, whom they believed to be bloodless brutes, were not brutes but warm-hearted human beings. This is the moment when they recognize that “we are different outside but the same inside.”
  That scene was the most appealing to me.

                       サムへの手紙

 諸君は12月16日「硫黄島からの手紙」を見ましたが、どうでしたか。感動する場面がありましたか。私はサムという死亡したアメリカ兵がポケットに持っていた手紙を西男爵が読む場面に感動しました。
 手紙はサムに母親から送られたもので、飼っている犬がいたずら者でフェンスの下に穴を堀ったなどという家庭のことが書いてありました。手紙の内容はよく覚えていませんが、最後は次のようになっていました。「あなたが正しいと思うことをしなさい。それが正義です。身体を大事にして、帰ってきて下さい」
西男爵が、疲れきって寝そべっていた部下の兵士達に手紙を読み聞かせていると、兵士達はまるで何かが頭の中でひらめいたかのように一人、また一人と立ち始めます。彼らはサムの母親に敬意を表しているようでした。明らかに一人一人が故国日本の母のことを思い出していたのです。一人が「俺のおっかさんも同じことを書いてきたよ」と言います。
 この瞬間、兵士達はアメリカ兵は鬼畜ではなく血の通った人間だということが分かるのです。この瞬間、兵士達は「われわれは外見は違っても中身は同じなのだ」ということが分かるのです。
 あのシーンは最も訴えるものがありました。
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校2年 日英バイリンガル通信 No. 25 June 20, 2006 松 岡 博
RAFTING

  Nothing is more adventurous than rafting. It is exciting, thrilling, and a lot of fun.
  When you wear your spacesuit-like rafting suit, you are an Apollo 11 astronaut filled with anxiety and ambition to conquer space.
Once you get in your raft, you are on the “River of No Return.” You must be ready for any risk you may experience during a 100-minute adventure.
  After a ten-minute practice of paddling, you are a skillful paddler. You can freely move your raft forward, backward, clockwise, and counterclockwise.
Now you are shooting down the stream. Mountainous waves and giant rocks are nothing to be afraid of. Crash the mountains and avoid the obstacles! Angry waves mercilessly attack you in order to turn over your boat. Thunderous waters repeatedly flood you in an attempt to sink your raft. Face them. Never give up. A moment of relief is the moment of danger. The devil lies in your victorious shouts, “We’ve cleared the waves!” Victory can turn into defeat in another moment. You must always be tense. Keep paddling your way down, down, down the rapids.
After an hour and 40 minutes, you finally reach your destination, safe and sound, exhausted and satisfied with the feeling of “I’ve done it!”

                     ラフティング

 最高のアドベンチャーならラフティング。ワクワク、ドキドキ、スリルがあって、面白い。
 宇宙服そっくりのラフティング服を身に着ければ、君はアポロ11号の宇宙飛行士。不安はあるが宇宙征服の野心満々。
ラフトに乗ったら最後、もうあとには「帰らざる河」。100分のアドベンチャーで遭遇するどんな危機をも覚悟せよ。
パドルの練習10分で、パドル漕ぎの達人だ。ラフトの操作自由自在。前進、後退、右回転に左回転。
 さあ、急流下りの真っ只中。山のような大波と巨大な岩など恐れるな。山を砕け! 岩を避けろ! 怒涛が、ラフトめ、ひっくり返れと激しく襲う。轟く波の洪水が、ラフトめ、沈めと何度も襲う。立ち向かえ。ネバー ギブアップ。瞬時の油断が大敵だ。「波をクリアー!」の勝どきに魔が潜む。勝利も次の瞬間敗北かも。気を張り詰めよ。パドルを漕いで、漕いで、漕ぎまくり、早瀬を下れ、どんどん、どんどん。 
100分後、ついに着陸地点だ。疲れはあるが、「やったぜ!」の満足感に浸って、無事に無傷で到着だ。
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“River of No Return”【映画】帰らざる河 ◆米1954マリリン・モンロー出演。激流をいかだで下る家族の物語
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校2年 日英バイリンガル通信 No. 24 May 25, 2006 松 岡 博
YUKAR

  You are going to go to Hokkaido and visit the Ainu Village in June. What do you know about the Ainu? Have you ever heard the Ainu language? Do you know any Ainu tales?
  Listen to this tape. You can hear something like a song. This is yukar, a tale of a god named Ayunurakkur. The tale goes:
  Once upon a time Ayunarakkur and his sister lived in a castle. One day the young man went to the mountains, where he met two women. One came from the sea, and the other from the mountains. They said to him, “We are your brides.” He returned home and asked his sister, “Who on earth am I? Who are the women?” She said, “Listen. I am the moon god, and you are the son of God. They are your brides. Marry them and have a lot of children.”
  The narrator of yukar sits at the fireside and recites the adventure stories all night beating the fireside with a stick. The yukar stories are about gods who descend from the heavens to the human world and experience various dramatic events.
  Some yukar have about 30,000 lines. The narrators memorize all the lines and recite them by heart. Why do they memorize such long yukar? Because the Ainu do not have letters for their language. 
   
                       ユーカラ

 諸君は6月に北海道のアイヌ村を訪れますが、アイヌ人について何か知っていますか。アイヌ語を聞いたことがありますか。アイヌの昔話を知っていますか。
 テープを聞いて下さい。歌のようなものが聞こえますね。これはユーカラと言って、アイヌラックルという名の神の話です。次ようなお話です。
 昔、あるお城にアイヌラックルとその姉が住んでいました。ある日その若者が山に行ったところ、二人の女に会いました。一人は海の、もう一人は山の生まれで、「私達はあなたの花嫁です」と言いました。若者は家に帰り、姉に「私は一体誰なのですか。二人の女は誰なのですか」と尋ねました。姉は「よろしいか。私は月の神で、あなたは神の子なのです。二人の女はあなたの花嫁です。結婚して子供を沢山つくりなさい」と答えました。
 ユーカラの語り手は炉辺に座り、棒で炉辺をたたいて冒険物語を一晩中朗唱します。ユーカラの話は、天から人間世界に降りてきた神の話で、神は様々な劇的出来事を経験します。 ユーカラには約3万行あるものがあります。語り手は全部覚えていて、そらで朗唱します。なぜそんな長いユーカラを覚えるのでしょう。アイヌ語には文字がないからです。
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校1年 日英バイリンガル通信 No. 23 February 8, 2006 松 岡 博
                
                  NOTHING IS MORE SHOCKING

  Last December you saw Otokotachi no Yamato (Men’s Battleship Yamato). What was your impression? When Yamato sank on April 7 in 1945, she took 2,747 men with her, but 269 of her crew survived. How were they rescued*? Senkan Yamato no Saigo (The Last of the Battleship Yamato) written by Mitsuru Yoshida reads:
  “A gunner* rescued by a lifeboat of the Destroyer* Hatsushimo said: –The lifeboat is soon full of drifters*. It is in danger of sinking as it is still adding more and more drifters. If it continues to rescue more, it cannot avoid* turning over. Then all the men on board will be drowned in the west sea. Yet, more and more hands of drifters grasp* the gunwale* of the lifeboat. Their power is threatening*. The boat tipped so much that it will sink any minute if nothing is done about it. 
  Then, the captain and the petty officers* draw their Japanese swords which they wore, cut the crowded wrists of drifters one after another or kick and drop them down into the sea. This is a desperate measure* to save at least* those on the boat. When their wrists were cut, they lean back and drop into the sea miserably. I cannot forget their faces and eyes all my life. The men swinging* the swords turn pale. They drip a nervous sweat*. Gasping and panting*, they run around the gunwale*. This is a hell in this life.”
  If this is true, nothing is more shocking.
                    こんなショッキングなことはない
 
 諸君は去年十二月「男たちの大和」を見ましたが感想はどうでしたか。戦艦大和は一九四五年四月七日に沈没しました。その時二七四七人の乗員も「大和」と運命を共にしましたが二六九人は助かりました。どのように救助されたのでしょう。吉田満著『戦艦大和の最期』に次のように記されています。
 「初霜」救助艇ニヒロワレタル砲術士、左ノゴトク洩ラス──
救助艇タチマチニ漂流者ヲ満載、ナオモ追加スル一方ニテ、スデニ危険状態ニ陥ル 更ニ収拾セバ転覆避ヶ難ク、全員空シク西海ノ藻屑トナラン シカモ船ベリニカカル手ハイヨイヨ多ク、ソノ力激シク、艇ノ傾斜、放置ヲ許サザル状況ニ至ル
ココニ艇指揮オヨビ乗組下士官、用意ノ日本刀ノ鞘ヲ払イ、犇メク腕ヲ、手首ヨリバッサ、バッサト斬リ捨テ、マタハ足蹴ニカケテ突キ落トス セメテ、スデニ救助艇ニアル者ヲ救ワントノ苦肉の策ナルモ、斬ラルルヤ敢エナクノケゾッテ堕チユク、ソノ顔、ソノ眼光、終生消エ難カラン 剣ヲ揮ウ身モ、顔面蒼白、油汗滴リ、喘ギツツ船ベリヲ走リ回ル 今生ノ地獄絵ナリ──
 これが本当なら、こんなショッキングなことははい。
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校1年 日英バイリンガル通信  No. 22 July 13, 2005 松 岡 博
HELP YOUR NEIGHBORS (PART 3)

  There are many stories of how people saved their neighbors in an emergency.
  On January 13, 1982, twenty centimeters of snow had fallen in Washington. The temperature was minus 5 degrees C. An airplane with 83 people on board took off from a Washington airport, but failed to go up, hit a bridge, and fell into the Potomac River. Only five people survived the crash. They were floating on debris in the icy water.
  A police helicopter arrived over the river. First, the copter crew lowered a lifeline to a woman. She was too weak to grab the line. The crew made a second attempt, but she released it again. She was screaming, “Somebody, please help me!” Mr. Lenny Skutnick, an onlooker on the bank, jumped into the river, and pulled her to the bank.
  Next, the crew dropped the lifeline to a middle-aged man. He grabbed it, but handed it to his neighbors. The crew lowered the rope to him over and over again, but he repeatedly passed the line to the others. When the helicopter returned for the man at last, he had gone under icy surface and drowned.

                     汝の隣人を助けよ(その3)

 緊急時に近くの人を助けたという話はいくらもあります。
1982年1月13日は、積雪20cmで、マイナス5度だった。ワシントンの空港を飛び立った飛行機が、上昇に失敗し、橋に衝突、ポトマック川に墜落した。生き残ったのは5人だけで、飛行機の残骸や、飛行機の機体の部分にしがみついていた。
 警察のヘリコプターが来て、まず救命綱をある女性に降ろした。しかし女性は弱っていて綱をつかむことができなかった。ヘリの乗員はもう一度トライしたが、女性は綱をつかんでいることができず、「誰か、助けて!」と叫んでいた。乾き市でこれを見ていたレニー・スクトニkックさんは川に飛び込み、女性を岸まで救助した。。
 次にヘリの乗員は中年の男性に救命綱を降ろした。男性は綱をつかみ、地価kの人に手渡した。乗員は何度も綱をこの男性に降ろしたのだが、彼はそのたびに綱を他の人に譲った。ヘリコプターがやっとこの男性のところに戻った時は、彼は氷のような水面下に消え、溺死していた。
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MAT’S EYE ON THE WORLD MATの目
南山高等学校1年 日英バイリンガル通信  No. 21 July 1, 2005 松 岡 博
HELP YOUR NEIGHBORS (Part 2)

  The young man who saved Mr. Nakata is Mr. Mitsutoku Majima. He is a freshman* of Hyogo University.
  At the time of the accident, Mr. Majima was riding on the second car of the train. When the train derailed, he heard a scream* of the brake. Passengers fell on him in a pile*. Windows smashed* into pieces. People around him were bleeding*. His left leg was broken. People were crying, “Help me! Help me!” It was hell*.
  “I want to survive*,” Mr. Majima first thought. “I want to survive even if all the other passengers may die.” Then he heard his neighbors encouraging one another. He said to himself, “How selfish I am! All these people must survive.”
  Mr. Majima found himself lying on a middle aged man. He was bleeding from his head. The man said, “I may die.” Mr. Majima shouted at him, “Hey, Man, don’t die. We will survive together!”
Two hours later, Mr. Majima was rescued. To his regret*, however, not all of the passengers survived.
  Mr. Ito said at the end of his talk, “It is important that all of us, all Nanzan students, will survive a fire. For that purpose*, let’s help one another in an emergency*.”

                    汝の隣人を助けよ (その2)

 中田さんを助けたのは兵庫大学1年生、真島光徳さんだ。
 事故の時、真島さんは2車両目に乗っていた。電車が脱線し、ブレーキのきしむ音が聞こえた。乗客が真島さんの上に重なるように倒れ、窓が粉々に砕け、周りの人は血だらけだった。真島さんは左足を骨折。皆「助けて! 助けて!」と叫んでいた。地獄だった。
 始め、真島さんは「助かりたい。自分だけは助かりたい。皆が死んでも」と思った。その後、周りの人が励ましあっている声が聞こえ「自分は利己主義だ。ここにいる皆が助からねば」と思った。
 気がつくと、真島さんは中年の男の人の上に乗っており、その人の頭から血が流れていた。男の人は「死ぬかもしれへん」とつぶやいた。真島さんは「おっちゃん、死なんといて。一緒に助かるんや!」と大きな声で言った。
 2時間後、真島さんは救助されたが、乗客全員が救助されたわけではなく、残念に思った。
 伊藤先生は訓話を「火災の時、私達全員、南山生全員が助かることが大切です。だから、緊急時にはお互いに助け合いましょう」と締めくくられた。
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freshman大学一年生scream軋む音 in a pile重なって smash砕ける bleed血を流す hell地獄 survive生き残るto one’s regret(人が)残念に思ったことには purpose目的 emergency緊急事